BtoB(企業間取引)のEC化は、多くの企業が注目するテーマです。
しかし実際に導入を進めると、組織間の調整、データ統合、コスト負担など、想定以上に多くの課題に直面します。

この記事では、BtoB ECの導入でよくある壁と、その乗り越え方を、現場目線でやさしく整理します。

きびだんごショップの事例を交えながら、「何から始めればいいか」「どんな仕組みを整えればうまく回るか」が自然とわかる内容です。

BtoB ECの課題全体像

桃子「BtoBのECって、普通のネットショップとどう違うの?」

イヌオ「“お客さんが企業”という点が一番の違いだよ。取引の流れも、金額も、意思決定の仕方もまったく違うんだ。」

企業間取引ECの特性と現状

BtoB ECは、法人間の継続的な取引をデジタル化する仕組みです。
個人向け(BtoC)と比べて、1回あたりの注文金額が大きく、関係者も多いのが特徴です。

きびだんごショップを例にすると、「ギフト用だんごを百貨店やカフェチェーンに卸す」といった取引がBtoBにあたります。

この場合、注文はメールやFAXでやり取りされ、担当者が手作業で見積書を作ることも多いです。

近年はEC化が進み、「見積り・受注・請求」までを一気通貫で管理する仕組み が求められています。

導入前に直面する組織・業務の障壁

BtoB ECは、一部署では決められません。営業、経理、システム部など、複数の部署が関わります。それぞれの目的が異なるため、導入計画がまとまらないこともあります。

たとえば、

  • 営業部門:「取引先との関係を壊したくない」
  • 経理部門:「請求データとの整合性を保ちたい」
  • システム部門:「既存システムとの連携が不安」

というように、意見がばらばらになりやすいのです。

決済・セキュリティ・法規制の課題

BtoBでは、掛け払い(後払い)や請求書決済が多く、個人向けのクレジット決済とは異なる仕組みが必要です。

さらに、企業情報を扱うため、セキュリティと法令遵守(特に個人情報保護や電子帳簿保存法対応)が欠かせません。

きびだんごショップでも、取引先企業の情報を扱う場合は、アクセス権限を細かく設定し、担当者以外が見られないようにする仕組みが必要になります。

〈要点整理〉

  • BtoB ECは「法人向けの継続取引」をデジタル化する仕組み
  • 部門ごとの目的が異なり、導入調整が難しい
  • セキュリティ・法令対応などBtoCにはない要素が重要

導入企業が直面する具体的な問題と原因

桃子「せっかくシステムを入れても、思ったように使われないことがあるのはなぜ?」

キジオ「原因は“要件の曖昧さ”と“データの分断”が多いね。数字で見てもそこが一番の課題だよ。」

要件定義の不明確さと部門間の調整難

「誰が、どの機能を、どんな目的で使うか」が明確でないまま導入すると、現場が混乱し、使いづらい仕組みになります。

たとえばきびだんごショップでは、
営業が「顧客情報をすぐに検索したい」と言っても、
システム側が「商品在庫との連携を優先したい」と考えていると、要件がぶつかります。

最初に「業務フローを見える化」して、目的を共有しておくことが重要です。

サイロ化したデータとIT環境の統合難

BtoBでは、顧客管理(CRM)、受注管理(OMS)、会計(ERP)などが別システムになっていることが多く、データが連携されていません。

これを「サイロ化」と呼びます。

統合されていないと、たとえば「A社の注文履歴」と「請求書の発行状況」が一致せず、確認作業が増えます。

コストとROI(投資対効果)の不確実性

システム導入には費用がかかります。ただし、すぐに効果が出るとは限りません。

ROI(投資対効果)を測るためには、
“時間短縮”“人件費削減”“顧客対応の改善” といった指標を事前に設定しておく必要があります。

〈要点整理〉

  • 要件が曖昧だと現場で混乱が起きる
  • サイロ化(データの分断)はミスや遅延の原因
  • ROIは短期的な利益だけでなく、業務改善効果でも見る

課題解決の実践的アプローチと成功事例

桃子「どうすれば、導入をうまく進められるの?」

イヌオ「“全部を一度に変えようとしない”ことが大事。段階的に進めるのがコツだよ。」

ソリューション設計と段階的導入のポイント

最初から全機能を入れようとせず、

「見積り→受注→請求」といった流れのうち、影響範囲が小さいところから始めるとスムーズです。

きびだんごショップなら、まずは「卸先専用の発注フォーム」を作り、

FAXやメールを減らすことから始めてみましょう。

データ連携・API・標準化による統合

APIとは、システム同士をつなぐための“接続口”のことです。

これを使うことで、在庫システムや会計ソフトと自動連携ができるようになります。

標準化されたフォーマットを使うと、後のシステム拡張も簡単になります。

導入後の運用改善と指標設定・評価

導入して終わりではなく、定期的に「どの業務が改善されたか」「どの機能が使われていないか」を確認します。

社内の声を吸い上げて運用ルールを見直すことが、長期的な成功につながります。

〈要点整理〉

  • 小さく始めて段階的に導入するのが成功のコツ
  • API連携でデータの自動化と一貫性を実現
  • 定期的な運用レビューで改善を続ける

まとめ

桃子「なるほど。思ったより“仕組みづくり”の部分が大事なんだね。」

キジオ「そう。ツールよりも“運用設計”をどう整えるかが成否を分けるんだ。」

BtoB ECは、単なるシステム導入ではなく、
企業全体の業務プロセスを見直すプロジェクトです。

焦らず、現場の声を聞きながら一歩ずつ整えることで、取引スピードと信頼性を両立できます。

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