BtoB ECサイトを立ち上げてから数ヶ月、アクセス数はそれなりにあるのに問い合わせや受注が思うように増えない。こうした悩みを抱える企業は、決して珍しくありません。 「BtoB ECのメリットとデメリット|導入効果をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

特に従来の対面営業や電話営業で成果を上げてきた企業ほど、EC運営における課題が見えにくく、なぜ売上が伸びないのか原因を特定するのが困難です。

健康食品などの企業間取引においてデジタル化を進める過程で、多くの企業が同様の課題に直面している現状を目の当たりにしてきました。
売上が上がらない理由は、技術的な問題よりもむしろ顧客視点での運営設計や営業プロセスとの連携不足にあることが大半です。

今回は、実際に改善効果を上げた企業の取り組みをもとに、BtoB EC運営における売上向上の具体的な方法をお伝えします。

BtoB ECの売上が停滞する3つの根本原因

BtoB ECで売上が上がらない企業を分析すると、共通して見つかるのが以下の3つの課題です。
これらは表面的な問題として認識されにくく、根本的な改善に至らないケースが多く見られます。

顧客導線の設計ミスによる離脱率の高さ

一般的なBtoBの購買プロセスは、情報収集から検討、決裁まで数週間から数ヶ月を要します。
しかし多くのBtoB ECサイトは、BtoCのような即座の購入を前提とした導線設計になっており、企業購買者の行動パターンとミスマッチを起こしています。

ある製造業向け部品販売会社では、商品詳細ページの直帰率が75%を超えていました。
原因を調査すると、価格表示が「要見積もり」となっており、目安金額すら分からない状態で顧客が離脱していることが判明しました。
改善後は概算価格レンジの表示により、直帰率を45%まで改善し、見積もり依頼数が2.3倍に増加しています。

営業部門との連携不備が生む機会損失

BtoB ECサイトからの問い合わせやリード情報が営業部門に適切に引き継がれていない、または引き継がれても優先度が低く扱われているケースが散見されます。
これは社内の評価制度やインセンティブ設計の問題も関係しています。

ECサイト経由の問い合わせに対する初回コンタクトまでの時間が24時間を超える企業では、商談化率が大幅に低下する傾向があります。
逆に2時間以内にコンタクトを取る体制を整備した企業では、商談化率が平均で1.8倍向上しています。

企業購買者特有のニーズに対応できていない機能設計

個人消費者とは異なり、企業購買者は複数の承認段階や予算管理、納期調整など複雑な要件を抱えています。
これらの要件に対応していないECサイトでは、利便性の低さから従来の発注方法に回帰してしまいます。

複数ユーザーでの見積もり共有機能や、承認ワークフロー、予算上限設定などの機能不足は、特に中堅企業以上での利用定着を阻害する主要因となっています。

売上向上を実現する改善アプローチ

課題の特定ができたら、次は具体的な改善施策の実行です。
成功事例を分析すると、技術的な改修よりもプロセスの見直しから始めることで、早期に効果を実感できることが分かります。

顧客行動に合わせた導線の再設計

BtoB購買者の多くは、初回訪問で即座に発注を決めることはありません。まずは情報収集、次に社内検討、そして見積もり依頼という段階を経ます。この流れに沿った導線設計が不可欠です。

効果的なアプローチとしては、商品ページに「詳細資料ダウンロード」「導入事例」「無料相談」など、段階的なアクションを用意することです。ある化学薬品販売会社では、商品ページに技術仕様書のダウンロード機能を追加したところ、資料請求から見積もり依頼への転換率が23%向上しました。

価格についても「要見積もり」だけでなく、「参考価格帯」「最小ロット価格」など、検討材料となる情報を可能な限り提示することで、顧客の検討プロセスを支援できます。

営業プロセスとの効果的な統合方法

ECサイトと営業活動を別々の施策として捉えるのではなく、一連の顧客獲得プロセスとして統合することが重要です。特にリード管理システムとの連携により、ECサイト経由の問い合わせを営業部門が効率的にフォローできる体制を構築する必要があります。

成功している企業では、ECサイトでの顧客行動履歴(閲覧商品、滞在時間、資料ダウンロード履歴など)を営業担当者が確認できるシステムを導入しています。これにより、初回コンタクト時から顧客のニーズを把握した質の高い営業活動が可能になります。

営業とECの連携で最も重要なのは、リアルタイムでの情報共有です。顧客の関心度合いが高いタイミングを逃さないことが、商談化率向上の鍵となります。

企業特有の要件に応える機能実装

BtoB取引で求められる機能は、個人向けECとは大きく異なります。複数ユーザーでの利用、承認フロー、請求書発行、納期管理など、企業の購買プロセスに不可欠な機能を段階的に実装していくことで、利用率の向上につながります。

ただし、すべての機能を一度に実装する必要はありません。まずは主要顧客にヒアリングを行い、最も重要度の高い機能から優先的に対応していくことが効率的です。

実際の成功事例から学ぶ改善の進め方

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理論だけでなく、実際に売上改善を実現した企業の取り組みから、具体的な改善プロセスを見ていきましょう。

製造業向け部材販売会社の事例

従業員80名の部材販売会社では、ECサイトからの月間問い合わせ数が15件程度で停滞していました。詳細な分析を行った結果、商品カテゴリが専門用語中心で分かりにくく、目的の商品にたどり着けずに離脱している顧客が多いことが判明しました。

改善策として、商品カテゴリを用途別に再編成し、検索機能に同義語辞書を導入。さらに商品詳細ページに「よくある質問」「類似商品との比較」コンテンツを追加しました。これらの施策により、3ヶ月後には問い合わせ数が月間47件に増加し、そのうち32%が実際の受注に結びついています。

化学薬品商社のデジタル転換事例

創業50年の化学薬品商社では、長年の取引関係で成り立っていた営業スタイルからデジタル化への転換を図りました。しかし当初のECサイトは商品情報が不足しており、既存顧客からも「使いにくい」という声が多く寄せられていました。

改善のポイントは、営業担当者が日常的に顧客から質問される内容をすべて商品ページに掲載することでした。安全データシート、取扱注意事項、代替商品情報、在庫状況など、営業現場で蓄積されたナレッジをWebサイトに移植したのです。

結果として、既存顧客のリピート注文の40%がECサイト経由に移行し、営業担当者はより高度な提案活動に時間を割けるようになりました。ECサイト経由の売上は導入1年後に全体の25%を占めるまで成長しています。

小規模事業者向けサービス会社の急成長事例

従業員20名のオフィス用品販売会社では、大手との価格競争ではなく、中小企業向けのきめ細かいサービスで差別化を図ることを決めました。ECサイトには「小ロット対応」「即日配送エリア」「設置サービス」などの独自サービスを前面に打ち出し、価格以外の価値を明確に訴求しました。

加えて、問い合わせフォームを商品別に細分化し、顧客の具体的なニーズを事前に把握できる仕組みを導入。これにより営業効率が大幅に向上し、商談成約率は前年比で1.7倍に改善。ECサイト経由の新規顧客獲得数も月間5件から22件へと大幅に増加しています。 「BtoB EC導入ガイド|企業間取引を効率化する仕組みと手順」もあわせてご覧ください。